カナリアメイズ

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なぜミオリネはスレッタのために頑張るのか?(機動戦士ガンダム水星の魔女7話時点での感想)

突然だが、機動戦士ガンダム水星の魔女を観ている。

 

g-witch.net

 

今まで観たことのあるガンダムは00と鉄血のオルフェンズだけの私だが、ガンダムで学園ものをやる」と知った時は「どうなるんだろう……」と思っていた。

実際に放送が始まってみると、個性的なキャラクターやテンポよくまとまったストーリーなど、大変魅力的なアニメで、毎週日曜の夕方が楽しみになった。

(なお、本記事では前提知識やあらすじを省略している部分があり、「水星の魔女」視聴者向けであることをお断りしておく)

 

さて、水星の魔女第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」を視聴した後、私の中にある疑問が生まれた。

それは今作の主人公とヒロイン(ダブル主人公と言うべきかもしれない)、スレッタとミオリネの関係性についてだ。

より具体的に言うと、

「なんでミオリネってここまでスレッタのために頑張ってるの?」

ということだ。

 

ミオリネ本人は作中で「花嫁だから」と言っていたが、当然それだけでは説明にならない。

スレッタは確かに純粋で善良で強くていい子だけど、それだけでミオリネがここまで頑張るのか?とも思ってしまう。

そんなわけでおととい(放送終了後)からあれこれ考えていたところ、なんとなく自分で納得の行く理由が言語化できたので、感想がてら載せておく。

(ちなみに以下の文章はふせったーに掲載したものがベースとなっている)

 

結論から言って、ミオリネがスレッタのために奔走する理由の一つには、

大切なものを奪われたり否定されたりする辛さを知っているから」

というものがあるのだと思う。

 

ミオリネには、大切なものがあった。ピアノや母、温室の植物などである。
しかし、ピアノをやめさせたり母の死を軽んじた(ように見えた)父や、園芸を「地球の真似事」と嘲笑する周囲の人たちによって、彼女の「大切なもの」は毀損され、貶められてきた
ミオリネにとって、それがどんなに腹立たしく悲しいことかは、日頃の彼女の苛烈さに反映されていると思う。

そんなミオリネは、ある日スレッタと出会った。
彼女は出会って間もないうちから、ミオリネの大切なもの(トマト)を思いっきり肯定した。あまつさえ、温室を壊したグエルに謝罪を求めて決闘することにもなった。
この時点でミオリネからスレッタへの印象は悪くなかった(「グエルたちよりずっとマシ」くらいには思っていたはず)だろうが、彼女がスレッタの「花嫁」になり、行動を共にするようになったことで、さらに変化が訪れる。

まず、ミオリネがエアリアルに搭乗して決闘に臨んだ時、スレッタが乱入・頭突きをして、今までにない激しさで「エアリアルは私の家族だ」と言い切ったことで、ミオリネはスレッタにとってエアリアルが「大切なもの」だと理解したのだろう。
だから、自分が発端となった決闘騒ぎのせいでエアリアルが廃棄処分になるかもしれないと知った時、地球行きの絶好の機会を捨ててまで父親に直談判しに行き、スレッタがエアリアルを守るチャンスを作った。

 

また、スレッタから水星に学校を作りたいという夢を聞き、彼女がそのために頑張っていると知ったことで、スレッタも自分と同じように大切な夢を持っていると知り、スレッタ自身が過酷な試験に心折れてもなお叱咤激励した(スレッタを自分と重ねていた部分もあったのかもしれない)。

 

スレッタがエランに惹かれている様子を見ても何だかんだで一定の理解を示していたのも、彼女が誰かを大切に思う気持ちを尊重しようという姿勢の表れだったのだろう。

 
そして、インキュベーション会場での大立ち回り。あの場で孤立無援だったスレッタに、ミオリネはかつての自分の姿を見たのかもしれない。大切なものを奪われる痛み、大切なものを分かち合ってくれる人がいない悲しみを知っているからこそ、ミオリネは手を挙げたのだと思う。
だが、それだけではないかもしれない。あの時すでに、スレッタ(がエアリアルを大切に思う気持ちや彼女の夢)は、ミオリネ自身の「大切なもの」になっていたのではないか。新しく生まれた大切なものを守りたかったからこそ、今までの自分の言動(それらは過去に「大切なもの」をないがしろにされたことへの怒りの表明だったのではないか)を枉げてでも父親に頭を下げて戦う覚悟を示せたのではないか。

ミオリネにとって、スレッタのために動くことは決して「花婿への献身」ではない。それは、「大切なもの」をないがしろにされてきた自分の傷つきを癒やす過程であり、「大切なもの」を持つスレッタへの共感であり、彼女を大切に思う気持ちを貫くためのミオリネ自身の意志なのだと思う。

 

 

ミオリネの意志を目の当たりにしたスレッタが何を思うのか、彼女たちは「大切なもの」を守れるのか、今後の展開を楽しみにしたい。